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January 10, 2005

ベルリン フィルと子どもたち

映画評、といっても雑誌か何かの映画一覧みたいなのを観てちょっと興味を持っていて 本来行こうと思っていた映画が時間帯が合うのがなかったので思い立って行ってみたのです。いや、個人的にびっくりするくらいつぼでした。 ベルリンフィルが教育プログラムの一貫で舞台経験どころか、多くはダンスの経験もない、クラッシックにもほとんど興味がなかった子供たちを集めてストラヴィンスキーの「春の祭典」を躍らせる、と言う計画をたて、それを実現させるまでのドキュメンタリーです。

(子供、といっても8歳から20歳くらいだからかなり幅広い)。250人の
子供たちがいろいろなところから集められたわけですが、映画の中で取り上げられてい
るのはふたつのグループ。ひとつはダンススクール、それなりに真剣にダンスに取り組
んではいるものの舞台経験がある生徒は一人もいない、さらに男子が足りないから姉と
妹に引っ張ってこられた援軍くんもいるレベル。 そして下町にある学校…人種の坩堝
であるベルリンの象徴のような、いろいろな国から来た、多くは経済的にも余裕がなく
、家庭生活にもあまり恵まれていない、今まで「音楽やダンスを楽しむ」と言う経験に
あまり恵まれていない子どもたち。たぶん、日本だったらある程度計算できる、モデル
校みたいな学校でやるよね、きっと。それともその前にお母さんたち、我が子こそ!っ
て殺到しちゃうかしら?で、特に後者のほうの生徒達のこの企画への取り組み方が、変
わっていく過程が面白かったです。見ているこっちの側も、それなりに「お子様向け」のプ
ログラムなのかと思っていたら、かなり抽象性も、難易度も高いそれなりの踊りで、し
かも教えるほうも「子供だから」「初心者だから」といって、容赦はしないのです(手加
減はそれなりにしていると思うけれど)。
怒鳴る、と言うのではないけれど繰り返し、繰り返し同じ動きを要求し、厳しい言葉で
説明する。最初は好奇心や面白半分で従っていた子供たちがだんだん反発しだす。指示
に従わなかったり、辞めようとする子も出てくる。すごい、と思ったのは教えるほうの
人たちが、言葉を尽くすのね。なぜそうして欲しいか、どうなって欲しいのか、という
ことを言葉で説明する(ある意味とってもドイツ人っぽいかもー笑)。自分のことを思い
返せば、この時期「何故やらなければならないのか?」と言う問いに対して、説明して
くれる大人は決して多くなかったもの。
でも、この映画の中で芸術を子供たちに伝えようとする大人は子供だから手を抜くので
はなく、むしろ若い世代を相手にしているからこそ余計に真摯に、言葉を尽くして伝え
ようとしていたと思います。あと、押し付けばかりではなくそれなりに考える時間も作って
いました。

「クラッシックは古い」「わからない」と言う世代が数週間で「古い世代」の熱気に煽
られるようにして「古典」に取り組んでいく過程が印象的。それでも百パーセント受け
入れたわけではなく、ただ「こういうのもありだな」みたいな発言に変わっていったの
がかえって真実味があってよかった。この短い時間に「古典って素晴らしい」になっち
ゃったらむしろ安っぽい気がするもの。
結局、興味というのは方向性だと思うのだ。で、こういうプロジェクトと言うのはその
方向性を強烈に作る、と言う点で意味があると思うのです。
日本の教育プログラム、というのは与えただけで終わる、と言う「点」の意味合いが強
すぎると思うのね。一時的なもので「矢印」の方向にまで持っていけない、と言うか、
きっかけにすらならない。与えるほうとしても教える内容に対しても、それをどう伝え
るかについても思い入れを表現できない事も多いし。確かに作品の持つ力はあるけれど、ある程度意志を持って継承していかない限り古典って力を失っていってしまうのではないかしら。

欲を言えばあと20分長くしてもいいから、もう少し最後の本番を長く見せてほしかったなあ。

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