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May 29, 2005

「殺し屋シュウ」

幻冬舎文庫

私立大学文学部でアメリカ文学の研究室の助手を務める畑中修 通称シュウの裏の顔はなんと殺し屋。19歳の時、暴君として君臨した父を殺し、その罪は母が自らかぶり、そしてシュウはアメリカで訓練を受けた。持ち込まれる殺しの依頼は様々…相手の人生と正面から向き合い、その死にふさわしい武器を選び、プロフェッショナルな割に非情になりきれないシュウを主人公とする短編集。

血を見たり、暴力行為は話だけでも苦手なくせに、どうもけっこうハードボイルドめいたものが好きで。「LAコンフィデンシャル」「新宿鮫シリーズ(←小説の方)」、「ストロボ」や若竹七海さんの葉村晶のシリーズもこの範疇に入るかな。あ、007は苦手ですけどね、古畑任三郎は好きだけど(←微妙に関係ない)。野沢尚さんの作品も何作か読んでいます。その中でもこれは好きなほうかな。基本的に自信満々どこからでもかかって来いっ!というヒーローより、トラウマ系(笑)なヒーローの方が好きなのよ。筋肉ムキムキ(死語?)よりどことなく頼りない方が好き。女なぎ倒しまくっているよりも女に振り回される方がすき(←別に自分の好みとはリンクしないかと…たぶんー笑)。適度に乾いた感じで、適度にセンチメンタル。野沢さん本人はこの作品でハリウッド進出を夢見ていたと帯にありますが、監督と脚本を選べば意外といい線いくかもしれないですね。日本より「職業的殺し屋」と言うのが受け入れられそうだし(笑)。そもそもこの方の作品、って絶対映像化を念頭において作ってるし。

で、主人公の相方の美加なんですが最終章まで、実は意外と印象が希薄で…最終章になっていきなり存在感が増す感じ。まあ、考えようによればそれまでの章では殺し屋のシュウと被害者(?)がある程度1対1ので、それ以外はレギュラーだろうとあえて添え物的な存在にしており、彼女自身が重要なキーを握る最終章でいきなりクローズアップされるのは狙い通りなのかもしれないけれど。むしろ、主人公の母親の阿沙子さんの方が存在感がある様な気がします。

*        *            *
個人的に野沢さんの作品で、と言っても全部読んだわけではないし、厳密にはファンですらないけれど、一番好きなのは「砦なき者」ですね。マスコミが作り出した「怪物」とその虚像に熱狂するブラウン管の外の人々と、実際に報道に携る人たちの屈託と自負と戦い。さわやかに「怪物を倒して終わり」とすればよいものを、何だか苦さと不安が残る後味と、決してきれいさだけではない放送業界の描き方が面白かったと同時に、「野沢さん つらくないかなあ」と。いや、ああいう亡くなり方をされただけに後からとってつけたように思われるかもしれませんが、何だか放送業界を批判的に描く書き方がちょっと自己批判のような感じで、身を削って書いているように感じたところもありました。
割とサスペンスタッチのものしか読んでいないので、次は「龍時」を読んでみたいですね。サッカーの話みたいだし。

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