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August 15, 2005

NHK BS「大地の子になった日本人」

子供の頃、中国残留孤児の方たちの来日しての肉親探し、と言うことが頻繁に行われていて新聞やテレビでも大きく取り上げられていた。まだ、事情が良くわからないときも無事に対面かなった人たちが手に手を取り合って涙する姿は非常に感動的で、同時に胸が痛く、もう少しわかるようになってからは新聞で読む、あまりな手がかりの少なさに愕然とする思いがした。実の家族だとわかっても名乗りを上げられない人たちがいる、と言うのを知ったのもその頃だ。戦争が終わって長い時が過ぎ、孤児の人たちの平均年齢も上がって肉親が見つかる率も少なくなり、いつしか訪日調査自体が話題になることもなくなった。ハッピーエンドにしろ、悲しい結末にしろ、人は(特に日本人は、なのかもしれないが)お話が終わったその後をあまり知りたがらない。

この企画は、それこそお話の後、またはお話に収録されなかった部分を追ったもの。取り上げられた3人の方達は日本人を親に持ち、戦時中の子供の頃に中国にわたりそして故あって残された。
最初の女性は来日し、日本人の兄とめぐり合い、何ヶ月も迷いに迷ったあげく、中国に残った。彼女の養父は利発な彼女が自慢で、裕福ではない中大学まで出してくれた。養母は自分の娘のように育ててくれた。しかし、文革の中、養父母は日本のスパイとして糾弾され、養父は拘禁中に衰弱し、文革の一年後に死亡。「私たちはスパイじゃありません。日本人の幼女を育てただけです。」今も共に暮らす養母の言葉が重い。彼女は育ててくれた養母と、中国の人々を残しては行けず、長く学校の先生として勤めた後に、今は砂漠化が進む地域のために植林の作業に携る。日本の兄は定期的に彼女を訪れ、その作業を手伝っている。

二人目の男性は養父(母?)が死ぬ間際に自分が日本人であることを知らされる。すでに中国人女性と結婚し、家族を持っていたが子どもが「日本人の子」と言われるようになったため、思い立って家族で日本に移住。しかし、日本語が不自由な彼ら家族に対して周りの日本人たちは冷たく、相談できる人もなく、「国のお金をもらって…」みたいなことを言われたり、と疎外感ばかりが募って行った。数年を経て、中国へ帰国。日本の工場で学んだ技術を役立て、現地で工場を経営しており、中国人の友人も多い。子どもたちは日本に残って結婚した。

三人目の女性は三人の子どもを抱えて現地に残された母親が中国人と再婚。養父の暴力に耐えかねて母が妹ふたりを残して出て行ったときに、母親が帰ってくるように、と言う人質のような形で一人残された。しばらくは母や妹ともやりとりがあったが、いつしか途絶えた。一度妹が突然会いに来て、「母はお姉さんを置いてきたことを悔やんでいるけれど今の生活を守るために会えない。」と言った。その妹との連絡も、彼女(姉)が病気で入院しているとき、援助を求めた娘の手紙を境に途絶えた。母と比較的長く一緒に住んでいたことから日本国家からも孤児とは認定されていない。高齢の母が存命のうちに一度でいいから会いたい、と彼女は訴える。

戦後60年、NHKで大地の子が放映されてからでもすでに10年、孤児たちもそれぞれに年を重ねた。日本に戻った人たちの生活も順風とは行かず、一緒に帰って来た家族が日本に馴染めず、子どもたちが非行に手を染めるなどと言う報道も見られた。かって残留孤児問題は「苦労を重ねた彼らが日本というユートピアに帰れるか」みたいな、ちょっと驕った視点からの描き方が大きかった気がする。それに一石を投じたのが大地の子、と言う本でありドラマであったわけだけれど。

全編を通して心に残ったのは、彼らを取り巻く中国の人たちの目がとても暖かかったこと。もちろん彼らとて、文革で自分のせいで両親が拘禁されたり、「日本人の子」と子どもがからかわれたこともあったわけだし、彼らは中国に残るくらいだからいわばラッキーな例なのかもしれないけれど、長年先生をやっていた最初の女性が教え子にお祝いをしてもらったり、勤めていた学校に招かれて自分の体験を語ったり。春先のデモの人たちの敵意に満ちた瞳ばかりがクローズアップされる映像に何だか越えられない壁のようなものをどうしても感じずにはいられなかっただけに、製作スタッフの人たちが伝えようとした暖かさ、この国の懐の広さのようなものが伝わってきて心が温かくなった。加えて、昨今どうも国と国、国民対国民の関係ばかりで語ろうとするけれど、結局最終的にはひとりの人間同士の部分が大きいんだよね。毎日いやなニュースが多いからこそ、そう思いたい。

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