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October 28, 2006

TS ミュージカル 「AKURO~悪路」 

あらすじ(公式サイトより)
大和朝廷が京に都をかまえた頃。
陸奥(みちのく)の胆沢(いさわ)城に、降伏した蝦夷(えみし)たちの監督のため、
若き軍人・安倍高麿(あべのたかまろ)が赴任して来た。
そこで彼は、敬愛する大将軍・坂上田村麻呂より、蝦夷の隠れ里「鉄の谷」探索の
極秘指令を受ける。
やがて、高麿の前に現れる謎の若者。
その若者の導きで高麿が目にしたものは……
都で耳にした話とはまるで違う、大和による侵略の凄惨な真実だった

好みの舞台、としか言いようがないなあ。
殺陣、群舞、群唱、歴史もの、訴えかけるテーマ性がある作品で、群像劇…まあ私の好きな要素が全部入ってるんだもの。だから個人的にはお得感満載でした(笑) 確かに主役クラスで殺陣芝居にでたことがある人があまりいないはずなので、殺陣の完成度、とか言い出すときついし(その意味では宝塚の殺陣並みかと。)、初日ということで群唱も揃っていなかったし、まあ構成に粗い部分もあるんだけれど、舞台の上の人口密度が濃い(笑)こともあって不思議な熱気を感じる公演でした。終わって時がたっても何だかその熱気が残っている感じ。

テーマとしては新感線が2002年にやった「アテルイ」に似ていてこの作品もひどく好きで印象に残っているのだけれど歴史的な解釈としては今回の方がしっくり来るかなあ。大きな理由はねえ…基本的に私は征服者の描く平和の美しさって余り信じられないのだ(苦笑)。だから田村麻呂は実はいい人で、アテルイとの信義をとても大事にして蝦夷の人たちの味方♪っていうとどうしても「嘘だろう…」って思っちゃうんですよ。だから、今回のように英雄でありながら実は裏の顔が思いっきりあって、という田村麻呂のほうが納得しやすいわけですね。
で、その田村麻呂と対比するように高麿…絶対天下は取れないだろうし、田村麻呂にも従者にも在る意味蝦夷たちにも騙されている、どうにも頼りなーいお兄ちゃん。最初はすっかり美談にだまされていてもう鼻高々で語っちゃう。単純で、信じやすくて、野心はないけど夢があって、何だか懐かしいんだよね(笑)…私が子どもの頃のヒーローって、アニメでも漫画でもこういうタイプが多かったような。自分のくに@ヤマトを蝦夷達に何も言われても信じていたのに、目の当たりにした現実は信じていた自分の同胞達の残虐行為、そして糸を引いていたのは尊敬していた田村麻呂。自分の居場所だと、心のよりどころだと思っていた世界がガラガラと崩れていく…なんかね、そこでいきなりヒーローに大変身、というわけでもなく匿っていた蝦夷の女アケシをかばうため味方を斬ってしまい、とりあえず蝦夷の郷に送り届けようとするうちに反逆者として追われる身になり、昨日までの味方に斬り刻まれて死んでいく。最後の最後まで国に弓ひこう、とか言うのではなくて真実を訴える!という望みのもとに。
もうこの辺のささやかさが無茶苦茶好みです♪…そのくせ、主役には行かない体質?なので飽くまで目は蝦夷の人たちに釘付けな訳ですが(笑) 最後に高麿を半端に生き延びさせなかったのも○。ただ、結果的にあまりに悲惨なので普段だったら何だかなーって思うかもしれないささやかな救いがありがたい気もした。
やっぱり、民族間の争いはどうやっても救いがないよね。日本は単一民族だ、なんて発言が出ちゃうまでにはいろいろな歴史があった、ということ(今ですらそれは間違いだけれども)。どんなにきれいごとを並べたところで、民族が違う道理も違うから正義を振りかざしてもそれは相手にとっては横暴でしかないことも多いと思う。ある意味常にタイムリーな話題で、でも決して解決しない問題。過去に演劇だけでなくいろいろな手段で訴えられてきて、でも変わらず、それでもやっぱり繰り返し訴えていかなければいけない問題ではある。訴えたことで何かが変わる、というよりも訴えないことで意識の外に出されてしまっては困ることだから。

ちょこっとだけキャストについて。アケシの彩輝なおさんはちょっと野性味がある感じが自然の中に生きる蝦夷の女、という感じ。
謎の男の吉野圭吾さん。ここのところ私としては「SHIROH」「ダンス オブ ヴァンパイヤ」と続いたので、色物っぽくない奇麗な役の吉野さん、逆に新鮮だわ(笑)。霊的なもの的側面も出したかったのかもしれないけど、ちょっと奇麗にまとまりすぎている気もしたり…贅沢かな。その分、というわけでもないけれど蝦夷側で気になったのがオタケ役の平沢智さんとイサシコの駒田一さん。特に駒田さんはいつ観ても役の印象が変わるのが本当にすごいと思う。
そして、主役のサカケン。最初に観たのがレミゼのアンジョルナスだったんだよね。そのときといい、今回といい、アジテーター(扇動者)的な歌にすごく説得力があると改めて感じました。真摯に歌うことで周囲の意識を変えたり、煽ったりしていく、そういう役がすごく似合う。時代が時代なら吟遊詩人とかになってたかもね(笑)

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