書籍・雑誌

March 15, 2007

となり町戦争@三崎亜紀

非常に現実感がない、だからこそ現実感があるともいえるような話。
要は普通の街に住んでいる、普通のサラリーマンがある日読むものがないからと町内報を見ると、「となり町との回線のお知らせ」が載っている。街は全然戦争の気配はしないのに、町内方に載る戦死者の人数は確実に増えていって…ついに、町役場からある日町民の義務として相手の町の調査任務を命じられ、ついには役場の女性香西さんととなり町に住んで潜入捜査まですることになるのだが、いっこうに戦争の姿は見えてこない…。

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February 22, 2007

石井桃子展

作家、翻訳家の石井桃子さんが百歳を迎えられたそうでその記念展が銀座の教文館でやっている、とのことなので行ってみました。付設のホールで無料でやっているので大きな規模のものではなく、石井さんが書かれたり訳されたりした本の表紙(のコピー)が一覧でずらっと貼ってあるだけで、あとは書店の方でフェアをやっています。でもその表紙を観ても昔読んだ、大好きな本がたくさん。「迷子の天使」「三月ひなの月」などの自作も印象深いけれどそれ以上に「楽しい川辺」「トンボソのお姫様」「ちいさいおうち」、そしてピーターラビットやブルーナのシリーズなど、ああもう私はこの人の本で育ったんだなあ、と実感しました。中でも好きだったのが「とぶ船」。4人の兄弟を描いたファンタジー、という点ではナルニアに似ているんだけれど、船に乗って行きたい時代や、場所にいけるのがうらやましかった~。ファンタジーブームの昨今、映画化の話があってもおかしくないような気がするんですけれどね。

どこかで観た言葉に、「石井さんが訳している、というだけでその本の品質保証だった」というのがあったけれど、うちの母親あたりもそうだったんだと思うし、私自身が石井さんや村岡花子さんあたりが翻訳された本で育っているので、文章の好みにきっと影響を受けてるんじゃないかと思います。もっと大きくなってから読んだ本を違う訳文で読んでみる、と言うのはけっこう興味深いけれど、石井さんや村岡さんの訳で読んだ本を違う訳者で読むと違和感が先に来るんじゃないかな。

会場の一角にあった、石井さん自筆の色紙。

本は一生の友だち
本は友だち。一生の友だち。子ども時代に友だちになる本。そして大人になって友だちになる本。
本の友だちは一生その人と共にある。こうして生涯話しあえる本と出あえた人は仕あわせである。

https://www.iwanami.co.jp/hensyu/jidou/jtop_isii100th.html

90歳をすぎても現役で仕事されているのも本当に素晴らしい。「幻の朱い実」87歳で完成されたと言う作品ですが、是非読んでみたいです。

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October 17, 2006

エル ドラド@服部真澄(新潮文庫)

<あらすじ(Amazonより)>
食料の生産と流通を寡占し、世界的大産業に成長した「アグリビジネス」。彼らの次の狙いは新種のGMO(遺伝子組み換え作物)を駆使し、食料のみならず地球のあらゆる生態系を支配することだ―。アグリビジネスの陰謀を暴く原稿の一部を遺して消息を絶った、天才科学ジャーナリスト、レックス・ウォルシュ。翻訳家の蓮尾一生は、彼の足跡を追って南米ボリヴィアへ飛ぶ。

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October 15, 2006

アンダーグラウンド @村上春樹

地下鉄サリン事件が起こったときはたまたまスキーに行っていた。ひたすら滑って帰ってお風呂に行って食事の前のひと時にテレビをつけたら、ちょうどニュースがやっていて、何だかとんでもないことが起こったんだ、ということはわかった。お昼だった気がするので、いったん旅館に帰ってきてたんだと思う。会社のスキー部だったこともあり、それぞれに家や会社に連絡入れたりして、大きな被害を出した駅の真上に支店がある後輩が「支店が臨時休業したんだって」と言っていたのを覚えている。それでも、何となくそんなことが日本で起こるなんて考えられない、っていう意識がどこかにあって現実感がとても希薄だった。そのあとしばらくしてオウムに一斉捜査が入って彼らの犯罪が次々に明るみに出たわけだけれど、何だかあまりに荒唐無稽で、テレビではオウムの特殊性ばかりが強調され、やっぱり本当のところではブラウン管や、報道の中の世界、という印象を超えられなかった。いや、超えていなかった、という自覚すらもなかったのだけれど。

結局テレビの報道も、新聞や雑誌の記事も多くはある仮説を立てたり、伝えようとしている「印象」が決まっていて、被害者や関係者の証言はその仮説を証明したり印象を裏付けたりの材料として使われるため、いわゆる枝葉の部分がカットされたり都合のいい部分だけが抜き出されたりする。だからどうしても現実感が乏しくなるところがあるんだよね。
「アンダーグラウンド」は地下鉄サリン事件において、程度を問わず被害にあった人(&一部は関係者)にインタビューし、事件の概要を路線ごとにまとめた章の冒頭にはさみながら、ひとり、ひとりの記事として配置している。事件に関係ないところから、つまりはまずその人がどういう人で、どういう仕事をして、どういう生活を送っているかから始まるので、自分や、友人、知人などと重なっていく。いつもと同じような朝、連休の中日の出勤日、ちょっと出社するのが憂鬱だったり、あるいは休みの前にたまった仕事を片付けようと思っていたり、大事な取引で気がせいていたり…そんな中、あの「事件」に遭遇する。何かね、改めて知ったんですが現場の一つが今使っている路線の今降りている駅近辺なんですよ。そんなこともあって、今更ながらにあ、これって自分や自分の周りの人間が巻き込まれた可能性もある事件なんだな、と本当に今更ながらに実感した次第。リアルなんですよね。たまたま早い電車に乗ったり、遅い電車に乗ったり、いつもと違う車両だったり、風の向きだったり、そんな一つ一つのほんのちょっとした違いが紙一重で明暗を分けてしまう。重かったのが、被害者の家族の方が「朝早く出ようとした彼女に、自分が送っていこうといった」事が引っ掛かっている、ということ。好意から出た言葉だったのに、結果的に事件に関わってしまった、ということで今でも彼の心の枷になっているのがわかる。そう考えるとこの事件の被害者、といえるのはあの電車に乗り合わせた人だけではないということ。

あれから日本人の町の安全に対する安心感が揺らぎだしたような気もする。そういえば、あの時仕事先の知り合いに言われたんだった。「こんな事件が起こってもう日本になんか怖くて来れない、って人もいるんじゃないですか?」という私の問いに「いや、やっと日本も普通の国になった、って思う人もいるんじゃないですか?」って(苦笑)
そういえば手記の中でも日本でまさか危険なことが起こるわけがない、という意識から対処が遅れたり、倒れる人々に奇異な印象を抱いたり、ということが複数の被害者によって語られている。治安がいいのも安全なのも当り前だった時代はもう、過去のものになっていくのかもしれない。

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July 14, 2006

神様から一言 @荻原浩

Kamisama
<あらすじ>
佐倉凉平は。大手広告会社から珠川食品に入社した早々に、販売会議でトラブルを起こし、リストラ要員収容所と恐れられる「お客様相談室」へ異動となった。慣れないクレーム処理に追われ、嫌な上司と変わり者の同僚、すっかり会社に嫌気が差した涼平だが、貯めている家賃を払うまでは会社を辞めるわけにも行かず憂鬱な会社生活を送るうちに…。

*   *    *

何か、一緒に住んでいた彼女に出て行かれてしかもお客様相談室に左遷、という主人公の悲惨な状況に思わず「29歳のクリスマス」の山口智子を思い出しちゃった。全部観たわけでもないし、特に好きだったドラマでもないんだけど、クリスマスの朝に「左遷され、男に逃げられ、しかも円形脱毛症を発見する」という設定だけはものすごーく印象に残っている。いや、最初のふたつは普通に思いつくけど、何か三つ目が重なったことでのトホホ感が妙にリアルだったなあ。

この本を買ったのはまあ、荻原浩さんの本を何か読んでみたい、っていうのもあったけれどやっぱり「お客様相談室」っていうところに思い切り関心が(苦笑)。たまのクレーム処理も結構ヘビーなので、相談室で働くって想像を絶する大変さだと思うんですよね。で、興味津々、少しの怖いものみたさ。
まあ、飽くまで「小説」なので、特に後半部分はサラリーマン活劇、という乗りで、そりゃあありえねーってところもありましたがなかなか痛快で楽しかったです。で、それ以外のクレームをうけたり対処したりするところもけっこうちゃんと描いていて…ところどころ身につまされたり、参考になりそうだったりもしました(笑)
で、自分のところに来るクレームと比較して思ったのは、「顔のないお客さん」に応対するのは大変だな、ってこと。うちの業種でクレーム言って来るのは参加した、または申し込みをしたお客さんがほとんどですからね。そりゃあ、怒鳴ったり無理言われたりもするけれど、事実の確認はしやすいし、ある意味対策の立てようもあるわけですよ。でも、メーカー、特に食品など身近で手頃な製品は誰が買うか解らないし、それどころか買ってもないのに言いがかりをつけてくることだってできるわけだもんね。その意味じゃ、それに対応するストレスもさらに重たいだろうなあ、ってちょっとしみじみ思いました。

お客様は神様、っていうのもひとつの真実なら、こっちだって人間っていうのも本音だもんね。

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June 21, 2006

旅人の目

うわ~ドイツ行きたい…やっぱり。いいもん、北京は前向きに考えるもん …というのはおいといて。

仕事柄というのもあり、他の人が異国や旅について書いた文章を読むのが好きです。実のところ、なかなか忙しくて(仕事だけじゃないだろっという同僚の声)、そうそう多くの国に行ったり、ましてや住んだりもできないので他の人の文章を読んでちょっとだけ旅人気分のおすそ分けに預かるわけですね。といっても、旅の本の好き嫌いは、旅行の仕方が人それぞれ違うのと一緒でかなり好き嫌いが分かれるかと。
個人的には、ちょっと引いた目で観ていて、それでいて愛情と野次馬の目も忘れない、って言うのが好き。やたらと熱く肩入れされてもついていけないんだけど、あんまり「僕はどうせ異邦人だから」調にクールに醒められても面白くない。あと、はじめにテーマありき、と言うか「この国に関するエッセイを書くのを頼まれたので書きました、以上」みたいな、感情がこもっていないのはどれだけ素晴らしいとか美しいとか書いてあってもすぐわかる気がする。逆にガイドブックのサイドコラムや、主題は旅行ではないエッセイの異国の記述でも どんな写真よりもその国を生き生きと切り取っていきたい気分にさせるものもあるし。自分自身が旅をして、それを人に伝えようとする時にどうもうまく伝えることができなくて、もどかしい思いをすることが多いのでウマが合う旅行記にアウト、とっても得した気分になるのです。

最近読んでおすすめだった本がふたつ。

Photo
「わたしのマトカ」は片桐はいりさんが『かもめ食堂』のロケでフィンランドに行った時の話を中心に綴った初エッセイ集。映画の項でも書いたけど、個人的にフィンランドに思い入れがあることもあって楽しく読んだ。
話はちょっと外れますが、うちのお客さんは名所をたくさん訪れる=意味のある旅行をする、と思っている人が多いいようです。だから、世界遺産を短い行程の中にありったけ詰め込んだツアーはよく売れます。仕事で滞在していた、っていうところもあるけどはいりさんの旅行はその対極にあるような。地元の人が行くところで、地元の人と飲んだり、いろいろのぞいたりしながらそういうものを確かめていきます。農場体験のところが映画の1シーンのようでなんとも秀逸です。
私が初めてフィンランドに行ったのがちょうどこのくらいの時期でした。仕事が終わってから、まだ一日あるような白夜。仕事帰りに屋台のアイスクリーム、日向ぼっこを満喫する地元の人たち。優しい北欧の人たちが夏はひときわ優しいのです。

* * *
むかし、小田空さんの「空くんの手紙」という漫画が好きでした。最近、何描いてるんだろう?と気になっていたらAmazonのおすすめ本コーナーで思いがけず同じ名前を見つけてびっくり。まさか?と思ったらご本人でした。
絵が懐かしいタッチ(^^) 最初の印象が悪く、苦手だった中国を克服しようと再訪してはまってしまって、留学したあげくに延安で日本語教師までされていたとはびっくり。私の周りにも中国フリークが何人かいるけど、彼らが中国を語るときの口調は、ちょっと個性が強い悪友を語るときに似ている気がします。

Soe

「中国いかがですか」 小田空

続編も注文。楽しみ~。

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May 29, 2006

米原万里さんが亡くなりました

米原さんの名前をはじめて知ったのは、まだたぶん新入社員のとき。上の人がロシア関係で、お役所がらみの大きな仕事をするときに、米原さんが役所側でお願いした通訳さんのリストのトップに入っていて。私が持っていったファックスを上司がちらりと見て、「おおっ米原万里か~日本一のロシア語通訳なんだぜ、この人」と言いました。
私自身は米原さんと仕事上で関わる機会はなかったけれどそれがずっと印象に残っていて、数年後に「不実な美女か、貞淑な醜女(ブス)か」が文庫化された時は嬉しかった。
通訳さんやガイドさんとは仕事上長く関わっており、彼女達から学んだり可愛がってもらっていたこともあって、その第一人者である彼女の文章は仕事の上からも、単純な好奇心としても面白かった。やや斜めな語り口がこころよく、そしてその場が見えるかのように的確にその場面を切り取っていた。
すごい通訳さんの一つの条件は、事務的な通訳であっても通訳する相手の「色を出せる」ことなのだと聞いたことがある。長い間行動を共にする専属通訳であるならまだしも、様々な国際的場面を渡り歩く職業通訳の人にとって「その人の色を出す」までになるには鋭い観察力と相手の信頼を得るだけの説得力が必要だと思う。インタビューの通訳をするとき、相手に「この人に私のことがわかるのか?」って不安な思いをさせないくらいの。
米原さんの書く文章は淡々としつつ、それでいて生きた人間が描かれていた印象がある。最近はテレビでお見掛けすることも多かったけれど、その印象は変わらなかった。

56歳 まだまだ通訳ガイド業界では現役の年齢なのに。
日々いろいろなことが起こる世界情勢の中、もう少し彼女の文章を、言葉を読んでいたかった、と思う。


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April 01, 2006

推理小説

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ちょっと前までやっていたテレビドラマ、「アンフェア」の原作本。
ドラマで見てさえあんな入り組んだ話をいったいこの薄さでどうやってまとめたのか、と思ってたいたんですが。
「原作」というよりは、どっちかというと「ネタ本」という感じかな。登場人物と、エピソードの一部だけ借用した、というイメージ。

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January 16, 2006

狐笛のかなた 上橋菜穂子作

理論社 2003/11

Amazonのあらすじ紹介より
ひとの思いが聞こえる「聞き耳」の才を持つ少女・小夜が幼い日に助けた子狐は、恐ろしい呪者に命を握られ「使い魔」にされた霊狐だった。森陰屋敷に閉じ込められた少年・小春丸、そして小夜と霊狐・野火。彼らの運命は?

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November 09, 2005

同人誌あたりでやってればよかったのにね

いや、ここまで似ちゃうとちょっと申し開きも難しかろうね。あ、でもネットがなかったらここまで大事にはならなかったかも。

同人誌かなんかで、洒落でモチーフとしてやっているならまあありかなあ、と思うのよ。買うほうもそれを前提に買うわけで、その上で肴にしてあれこれ言うわけだし。でも、自分のもののように発表しちゃまずいよね。まあ元本のほうにかなり過剰な思い入れがあるから公平じゃないかもしれないけど、抜粋されたものだけ見ても原作の持つ輝きからは似て非なるものだなあ、とか思ってしまう。白紙の状態で読んだら結構感動できるかもしれないけれどね。

物好きなうちの妹はAmazonで注文などしてみたわけですが…さて、購入できるのか?それともその前にストップがかかるのか興味津々(笑) すでにストップがかかると踏んでか、USEDのサイトのほうに高額出品をしている人などもいるようで。

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